真ダチ/真鱈白子
shirako/cod milt真ダチは、真ダラの白子(精巣)にあたる部位で、冬の北海道を代表する味覚のひとつ。旬は真ダラの産卵期にあたる12月から2月ごろ。特に1〜2月の厳寒期に獲れるものほど身が充実し、乳白色で張りがあり、なめらかな舌触りと濃厚な旨みが楽しめる。この時期の真ダチは「冬のごちそう」として道内外で高く評価され、鍋物や寿司ネタとして欠かせない存在。鮮度が味を大きく左右するため、旬の時期に産地で食べる価値が最も高い食材といえる。
真ダチという名は、主に北海道で使われてきた。タチは、魚の白子を指す言葉。また、産卵期の雄ダラの精巣が大きく張り、形がはっきり“立って見える”ことからきたとされる「立つ」など、語源にはいくつかの説がある。「真」を付けた真ダチは、スケトウダラの白子(助ダチ)と区別するための呼び名で、真ダラの白子=最上級の白子という意味合いを持っている。
真ダラは古くから北海道の重要な食料魚だった。寒冷な海域で大量に獲れ、身は淡泊ながら保存性が高く、干物や塩蔵に適していたため、江戸時代以前から広く利用されてきた歴史がある。真ダチの主な産地は、北海道日本海側とオホーツク海沿岸。特に積丹半島周辺、留萌、稚内、網走などは漁が盛んで、質の高い真ダラが水揚げされる。冷たい海水と豊富なプランクトンに育まれた真ダラは身質が良く、タチも大ぶりで臭みが少ないのが特徴。北海道では水揚げ後すぐに下処理され、鮮度を保ったまま市場や飲食店に届けられるため、刺身や生食に近い調理も可能になる。
2023年(令和5年)の日本国内における真ダラの漁獲量は、約177,519トンと推計。そのうち約88%の155,872トンが北海道で水揚げされるなど、北海道が圧倒的な漁獲シェアを占めている状況だ。一方、全国的な漁獲動向としては、魚類全体の漁獲量が減少傾向にあるとされ、海水温の上昇や環境変動が漁獲量の変動に影響を与えていると示唆されている。近年の漁獲量やCPUE(努力量当たりの漁獲量)は上昇傾向にあり、資源量指標値が過去最大水準に達したことが報告されている。最新の評価によれば、直近の資源量は高い水準にあるとされ、2025年(令和7年)漁期の漁獲可能量や漁獲量の見込みも高めに設定されている。これら評価は系群(漁場や個体群)ごとに異なるため、日本海側で比較的良好な資源水準が続く一方、本州太平洋側では依然として低位で安定した漁獲につながる状況ではないという状況がみえてくる。また、黒潮の蛇行など近年の海洋環境の変動が日本近海の魚類分布に影響を与えており、秋サンマなどが豊漁となった一方で、秋サケは不漁という例が出ている。これはタラ類にも直接的・間接的に影響する可能性があり、今後の漁況を占う上で重要な潮流変化のひとつとされている。
市場での取引量は概ね安定した動きがみられるものの、一概に大きく増加しているわけではなく、時期や市場によってばらつきがあるという状況だ。
真ダチは濃厚な味わいから高脂肪の印象があるが、実際には良質な栄養を豊富に含む食材。特にビタミンDが多く、カルシウムの吸収を助け、骨の健康維持に役立つ。また、DHAやEPAといった不飽和脂肪酸も含まれ、血液をサラサラにし、生活習慣病予防にも効果が期待される。さらに、たんぱく質や亜鉛、セレンなどのミネラルも含まれ、免疫力向上や疲労回復をサポート。冬に体調を崩しやすい時期に適した、滋養豊かな食材だ。
真ダチの魅力は、調理法の幅広さにある。最も定番なのは真ダチポン酢で、下処理した白子をさっと湯引きし、とろりとした食感と上品な甘みを楽しめる。北海道の冬には欠かせないタチ鍋(タラ鍋)も人気で、昆布ダシの中でタチが溶け出し、スープに深いコクを与えてくれる。そのほか、衣を付けて揚げる真ダチ天ぷら、香ばしく焼く真ダチ焼き、味噌仕立ての汁物なども親しまれている。真ダチは、鮮度が落ちやすい、保存が利かない、という理由から主に漁村や産地で消費される“地元の贅沢品”だった。また、かつて内臓類は価値が低く、タチも現在ほど評価されていなかった。しかし、冬季の栄養価の高さ、加熱した際の独特の食感と旨みといった要因から、次第に「冬にしか味わえない滋養食」として重宝されるようになる。特に北海道では、漁師料理として味噌汁や鍋に入れる食べ方が定着し、家庭の味として受け継がれてきた。1980年代の昭和後期になると、冷蔵・流通技術の進歩により、札幌・ススキノなど都市部の和食店や寿司店、道外の割烹料理店でも提供されるようになる。このころから「北海道の冬の味覚」としてブランド化が進み、料理も洗練されていった。現在、海外ではキャビアやフォアグラに並ぶ珍味として評価されることもあり、地域食文化から全国・世界へ広がった食材といえる。北海道の自然の厳しさと豊かさを味わう「旬の食材」としてこれからも大切にしたい。
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